
やる気はどこから現れ、どう育まれるのでしょうか
辛いことと、向き合おうとすること、これも、やる気の一つ。 ものすごく辛いことに、黙々と立ち向かう方々にお会いになられたことは、ありますか? あの方々は、単純に「心が強い」わけではありません。その思考の流れをお話しましょう。 また、様々なストレスへ立ち向かうための「やる気」、同じ課題でも、Aさんは立ち向かい、Bさんは逃げて、Cさんはお手上げになり体調を崩します。 この違いは、どこから生じるのでしょうか。そして、対処は可能なのでしょうか。 ストレスと向き合いながら生きるヒントをお話します。
「やる気」は何からできている?
どんなに体が疲れていても、自分が「行いたい!」と強く願うと、人は驚くほど行動ができるものです。
では、その「やる気」は何でできているのでしょう。
実は、自分だけでは無理で、他者の存在が必要です。
少し興味深い研究があります。
子供たちの学習に対する「やる気」を調べた研究です。
ここでは「やる気」の要因として
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「学習成果欲求」:べんきょうをわかるようになりたい
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「努力希求」:べんきょうをやりたい気持ち
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「積極的かかわり」:せんせいのはなしをよくきく
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「自己の集団適応行動」:クラスの子に頼りにされていると思う
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「家庭学習」:しゅくだいをきちんとやってくる
ここで明らかなことは、「自分が行いたい」、という考えと、「自分を見ていてくれる、承認してくれる他者」、がやる気の要因である、ということです。
他者から期待されることで、期待に沿った行動をしようというやる気を産み出す、「ピグマリオン効果」
褒められることで、さらに取り組もうという気持ちが芽生える「エンハウジング効果」は、どちらも他者の存在がきっかけになっています。
「他者」は実際に関わる人だけではありません。
誰かのために何かをする、ことばかりが、日々の営みではありませんね。
ご自分のために困難に取り組むことも少なくありません。
そこに「他者」はいないのではないか?、というご意見、ごもっともです。
「他者」は実は、自分の中にいるんです。ほんと。
自分の中には3人の「人」がいる、という考え方をご存じでしょうか
何か悪いことをしようと考えるときに、それを止める自分と、止めずに悪いことを推奨する自分、「天使」と「悪魔」の会話で、擬人化している表現をご覧になったことはありますか。
これは、交流分析という心理学理論の基本的な考え方です。
1950年代にアメリカの精神科医のエリック・バーン氏により提唱されました。
自分の中にいる「自我」が次の3つ(5つの構造)から成り立つ、という考え方です。
P:「親」:親や養育者のような考え方、過去に親などから学んだ思考や感情、行動のパターンです
支配的な親:Critical Parents(CP):ルールや秩序を重んじる
養育的な親(Nurturing Parents)(NP):優しく承認する
A:「大人」:現在の自分、理性的に冷静に対処する現在の思考や感情、行動のパターンです
C:「子ども」:いわゆる理性が働いていない、本能で活動する自分、過去の自分の経験に基づく思考や感情、行動のパターンです
自由な子ども(Free Child)(FC):いわゆるわがまま的な反応、自分の感情のままに行動する
順応した子ども(Adapted Child)(AC):養育者の指示に従う、我慢する。
自分がどんなタイプなのか、簡単に確認できるサイトが厚生労働省で運営されています。
https://kokoro.mhlw.go.jp/egograms/
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ご自身の傾向を確認してみてはいかがでしょう。無料で診断できます。
丁寧な検査結果がPDFで示されてダウンロードが可能です。
「やる気」はどこからか?
お分かりになりましたか?
「やる気」はあなたの中にいる、「大人」と「親」のあなたから。
生まれ持った「やる気」は「子ども」のあなたからも生まれます。
「ストレス」はなぜ感じるのでしょうか。
やる気を削ぐ要因の一つ、ストレスについて考えてみましょう。
ストレスとは、外部からの圧力(ストレッサー)によって歪みが生じた状態をさします。
このストレッサーには様々な種類があります。
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物理的ストレッサー:暑さ 寒さ 騒音など
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化学的ストレッサー:たばこの煙 強い匂いなど
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心理・社会的ストレッサー:人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など
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生物的ストレッサー:病気 花粉など
それぞれのストレッサーを解決できれば、ストレス解消しすっきりですが、できなければ、「ストレス」として存在し続けます。
つまり、解決することが難しい「ストレッサー」が生じているときに、人は「ストレス」を感じるのです。
ストレスは対処できるのでしょうか?
世の中には、ストレスの対処方法がたくさん紹介されていますね。
いくつか例をご紹介しましょう。
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自分の楽しいと思えることをする:運動、スポーツ、おしゃべり、読書、おいしいものを食べる、ストレス解消グッズで遊ぶ お風呂にゆっくり入る
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感情に働きかける行動をとる:泣ける映画を観る いやなことを紙に書きだしてみつめる 掃除する 大声をだす
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しっかり休む:ぼーっとする 良く眠る
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息抜き行動をする:こまめに席をたつ 深呼吸する 紙を破る
みなさんは、これらの行動を試されたことはありますか?
試してみて、対処できましたか?
多分、一時的にすっきりした、だけかもしれません。もし、そうなら、ストレッサーは解決されていないからです。
強いストレッサーに対処できた方々がいます。
過去の歴史をご紹介しましょう。
海外の出来事です。クロアチア紛争下を思春期・青年期に生きた女性たちは、紛争が生じている状態でも、ストレッサーに対処し、前向きに生きることが可能でした。そればかりか、戦後の社会をどう生きるか、に標準を合わせ準備を続けていた、といいます。
つまり、ストレッサーがありつづける状態でも、「健康」であった方々の存在です。
少し脱線しますが、私の経験談です。
ひょっとしたら、文献はありませんが、現在の90歳代の方々、戦時中を生きられた方々の中には、同じように向き合い戦後の混乱期から現在まで生き抜いている、その生き様に似ていると個人的には思います。
私は病院で勤務していますが、認知機能が比較的保たれている90歳代の方々の傾向(私見)です。
年齢による身体機能の衰え、疾患による体の麻痺や、歩行が難しくなったり、腰痛などで身動きがとりにくくなったりした状態でも、「戦時中は本当に大変だった。今は幸せ。この状態でも楽しまなければ、生きている意味がない。」と笑顔を絶やさずに、できることを探そうと訓練に取り組まれる方々がいます。
「健康」とはストレスに対処できた状態、とも言えそうです
唐突ですが、あなたにとって「健康」とはどういう状態でしょうか。
病気をしていない状態、と答える方が多いかもしれません。
実は、1948年に発効されたWHO憲章の前文において、世界的に「健康」は次のように定義され、日本国内では以下のように訳されています。
「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳)」
すべてが満たされた状態、であって、健康を作り続ける、という営みが、人間にとって、生きていくために必要なことである、ということを指しています。
ストレッサーを解消するのではなく、様々な対処をして、ある意味共存しながら、肉体的にも、精神的にも、社会的にも満たされた状態をつくることが健康であり、ストレッサーに対応した、ストレス対処できた状態です。
だから、やる気は、ストレッサーに向き合うための要素でもあり、「健康」を保つための資源の一つでもあり、他の資源を活用して「健康」を保つための道具でもあります。
では、どんな「やる気」をどのように育て、活用するのか、少しずつお話してまいりましょう。
参考文献
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/file:///C:/Users/sabur/Downloads/KJ00005163460.pdf
