
「ストレッサー」との向き合い方②
嫌なこと、しんどいこと、ストレスを感じる要因のことを「ストレッサー」と言います。 新年度を迎えるにあたり、就職、進学、進級など、初めての環境で過ごすというのも、立派な「ストレッサー」です。 上手く滑り出せるような「ストレッサー」との向き合い方、考え方のヒントをお話ししましょう。
楽しいことが、なぜ「ストレッサー」なのでしょうか?
ストレスとは、外部からの圧力(ストレッサー)によって「歪み」が生じた状態をさします。
なので、今ある状態から変化することは、例えば希望の学校に入学したり、希望していた仕事を始められるといった楽しいことであっても、いじめられたというような辛いことと同じように、「ストレッサー」ともとらえることができます。そのため、ストレスな状態に陥る可能性は十分にあり得るのです。
では、この二つの境界線、分かれ道のポイントは何でしょうか。
実は、ある出来事がきっかけで、「歪み」が生じるか、生じないか次第なのです。つまり、このような出来事によって、「歪み」が生じれば「ストレッサー」であり、「歪み」が生じなければ、やる気が育つ原動力となります。
人は、どういうときに緊張するのでしょうか。
ある出来事の受け取り方、認識の仕方の違いで緊張するかしないかが決まる、という考え方が、Lazarusが提唱した認知評価理論です。
①まず、ある出来事について、自分にとって重要なことか、大したことではないか、を判断します(一次評価)
例えば、バスが遅れているとき、待ち合わせ時間に遅れそうになっている状態であれば、遅れていることが重要なことですが、ゆとりをもって乗車しているときは、あまり気にならない出来事とされます。
そして、重要と感じたときに、緊張状態になります。
②次に、ある出来事の対処を自分自身で行うことができるか、できないかを判断します(二次評価)
きちんと取り組むことができる、とか、多少失敗しても大丈夫、と思えば、緊張感は緩みますし
ピアノの発表会の本番前など、練習したから大丈夫、と思うことでも、緊張感は緩みます。
逆に、失敗したらどうしよう、と不安でいっぱいになれば、緊張感は高まります
つまり、待ち合わせ時間に遅れそうになり、その結果重大な影響を及ぼしてしまうと考えると、緊張が強化され高まります。
ただし、待ち合わせ時間に遅れそうだとしても、他者のフォローなどで影響が最小限に食い止められることが分かると、緊張が落ち着きます。
このように、物事の重要度と自分で対処できる状況かどうか、で緊張感が変わります。
対処がしづらく緊張する出来事は、外部からの圧力、「ストレッサー」となります。その結果「歪み」を生じさせ、ストレスを生むのです。
逆に、重要度が低く、自分で対処できる出来事は緊張感を生まないため、「ストレッサー」にはなりにくい、ということになります。
緊張することは、悪いことなのでしょうか。
確かに緊張すると体に変化が生まれます。脈が速くなり、呼吸が浅くなりますので、時に息苦しく、それだけで動きにくさが増すかもしれません。
しかし、悪いことばかりではありません。集中力も高まるので、程よい緊張は、生活上必要です。
程よい緊張感を保つための能力とは
いつも前向きに課題に果敢に取り組む人に出会ったことはありませんか?
次から次へと難問を解決したり、いくつもの課題に同時に取り組んでいたり、常に冷静な方を見ると、羨ましくなりますね。
実は、この能力は、皆様にもあります。
これが、首尾一貫感覚(sense of coherence;SOC)/ストレス対処力です。
3つの構成要素があるのですが、
処理可能感:課題解決のためには、自分には有効な知恵、人や環境などの手立てがあると認識し、これらをきちんと活用して処理することができる、という考えが、この緊張感を左右します。
課題や欲求とは?
少し横道にそれます。
産まれてから今まで、実は産まれた瞬間から、人は課題を解決しながら生きています。
最近は赤ちゃんの意思を確認できる、という取り組みもあるようですが、一般的には赤ちゃんは産まれもった知識で、生きるために笑って他の人間を引き寄せ、泣くことで課題(欲求)を解決していきます。
マズローの欲求階層説によれば、赤ちゃんの最初の欲求は生理的欲求です。今は6段階とか、7段階といった、自己実現の上の己の成長に関する段階が追加されていますが、今回は初版の5段階をご紹介します。
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生理的欲求 呼吸、水、食料、睡眠など、生きるための基本的欲求。
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安全の欲求 安全、安定、秩序、防御など、生活の安定を求める欲求。
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社会的欲求 / 所属と愛の欲求 家族、友人、仲間など、一定の場、コミュニティに所属し、愛されたいという欲求。
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承認の欲求 / 尊重の欲求:コミュニティ内などで 他者から評価・尊重されたい、自信が欲しいという欲求。
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自己実現の欲求 自分の可能性を最大限に引き出し、理想の自分になりたいという欲求
少し混乱されないように整理しますと、「欲求」は自分の内側から涌き出るもの、「課題」は自分の外側から与えられるもの、です。
とはいえ、どちらもご自身にとっては圧力ですので、空腹も「ストレッサー」と捉えられるのです。
程よい緊張感を生み出す処理可能感とは
話を元に戻しましょう。
人は様々な欲求を満たす経験や、課題を解決する経験を積みながら日々過ごしています。
実は、この「経験」がご自身の課題解決のためのツールとして、ストックされているのです。
つまり、助けてくれる人の存在、自ら解決するために得た知識、活用したという実績、経済的基盤など、目に見えるものと、判断力、推理力といった知恵が、あなたの課題解決のためのツール(武器、アイテム)なのです。
「ストレッサー」との向き合い方
さて、今回は「ストレッサー」を生み出すか、生み出さないですむか、を決めているのは、ご自身であり、理論上はストレスのない状態で生きられるかもしれない、という淡い可能性をお話ししました。
ただ、実際には、人は様々な「欲求」を持つ生き物であり、常に「ストレッサー」に晒されている状態であること、この状態は、程よければ集中力を高めるメリットがあることも、お分かりいただけたと思います。
今回のお伝えしたかった「ストレッサー」との向き合い方は、過去のご自身の経験を武器に向き合うこと、です。
そして、その基礎的な能力がストレス対処力SOCの構成要素の1つ、処理可能感にあたります。
処理可能感は、日常の経験を糧に日々高めることができる(成長する)能力です。自分で解決できると感じられる事柄が増えてくれば、少しずつ「ストレッサー」との程よい距離感を保てるようになりますし、さらに課題解決のために、自ら取り組もうという気持ちにもなりやすいです。
でも、一人で立ち向かうのは、経験が不足している状態ではものすごく大変です。対処仕切れないと感じられたら、私たちにお知らせください。ご一緒にストレッサーと向き合う力、処理可能感を高めていきましょう。
