
場に馴染むには?
新生活、すぐに集団に溶け込める人、誰とも話せない人、フルリモートで場の雰囲気がつかみにくい人、様々ではないでしょうか。 実は、みんな平等に戸惑っているものです。心地よく落ち着く、日々穏やかに過ごすにはどうしたら良いのでしょうか。
自分だけ浮いてるって感じることありませんか?
新年度、新たな出会いが多い季節ですね。
あなたは、周りに一人も知り合いがいない集団に所属するとき、どんな行動をとるのでしょうか。
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ただ輪のなかに居ようとして、ひたすらに誰かが自分に語りかけてくれるのを待ち続けるのでしょうか
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なるべく誰にも気づかれないように、空気のごとく、たたずむことに専念するのでしょうか
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取りあえず眼前の人に挨拶して自ら場を取り仕切るのでしょうか
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瞬時に周囲の動きを観察して、声をかけるタイミングを探すのでしょうか
実はこれ、全てかつての私の行動です。特に1番や2番のときは、自分はどこに居ても浮いてる、という恐怖にも近い感覚を持っていたことが、立ち居振舞いの決定因子でした。
それが3番に変わり、いきなり動くものだから、後から浮きまくって居づらくなりました。
そんな経験を繰り返し、今はどこでも4番で振る舞うことにしています。みんなが黙ってるなら私もまずは黙る。それぞれの仕草から口火切りのタイミングを探し、どの私を見せるべきかを、ゆっくりと決めていくのです。
集団のなかにいるのに孤独なのはなぜか?
一人ではないのに、ひとりぼっちと感じること、孤独感について様々な研究がなされています。
大阪商業大学の社会心理学の研究を続けている林 萍萍が、様々な「孤独感」の定義を整理しています。
孤独と感じる内容は、それぞれ重みづけに差が生じるものの、孤独感に関する共通の認識として「主観的で、ネガティブで、有害で、普遍的に存在する」とされています。
つまり、孤独だと感じるのは自分の感覚次第で、ネガティブだから「浮いてる」と捉えやすく、どこにでもあるもの、ということになります。
孤独感の正体は?
孤独感が、本当に自分の感覚だけでコントロールできるのであれば、「気のせい」として、好きに振る舞う勇気さえ持てれば解決、なのですが、実際は違いますよね。
本当に場に馴染んでいない、事実がそこに存在しています。それは、ご自身のみの努力では解決しにくい課題なのです。
集団の中に存在しているはずなのに、何となく「浮いている」感覚、孤独感を覚えるとき、その正体は、「心理的安定性」が保たれていない状態と、近年捉えるようになりました。
社会心理学の研究をしている山口 裕幸による、「心理的安定性」の説明をご紹介します。
「心理的安全性」は Schein らによって 1965 年に提示され,その後,Edmondson が発展させた心地よい集団における、人の立ち居振舞いについての考え方です。
チームの心理的安全性が保たれいると判断するときは
【このチームでは率直に自分の意見を伝えても,他のメンバーがそれを拒絶したり,攻撃したり,恥ずかしいことだと感じたりして,対人関係を悪くさせるような心配はしなくてもよいという信念が共有されている状態】
を意味しています。
少し難しい表現なのですが、簡単にご説明すると、その場所に居ても良い、というか、居るべき存在で、所属している他の構成員についても、同じような考え方や、心地よい振る舞い方について、暗黙にみんなで共有している状態を示しています。
「心理的安定性」の特性は?
「心理的安定性」とは、 少し耳慣れない言葉だと思います。
特性が3つあります。
まず第 1 の特性は、組織やチームに備わる集団レベルの特性を示す概念、考え方であることです。
あくまでも対象は個人ではなく、集団で活動する中でメンバー同士がコミュニケーションをとり交流する過程において,雰囲気や空気,または集団の規範や風土と呼ばれる集団特性を生み、構成員が育てていくとされています。
第2の特性はメンバーの潜在意識に深く浸透して,ほぼ無自覚のうちにメンバーの判断や行動に影響を及ぼします。
つまり、メンバー個々にしてみれば,いわば集団における常識で振る舞っているのです。
おそらく前述した集団の中出の「孤独感」は、この常識を共有できず、浮いてしまう感覚なのだと思います。
第 3 の特性として,単なる仲良し集団ではなく,個人のミスやエラーを,開示しあったり,問題点を指摘しあったりして,そこからメンバー全員でより適切で効果的な判断や行動のあり方を学び,共有できる側面があります。
「心理的安定性」はどうすれば獲得できるのでしょうか
心理的安定性を獲得するには、集団が次の 4 つの行動を『連鎖』して実践することが求められると言われています。
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第 1 の行動はメンバー全員で学習するための枠組みをつくること(フレーミング)
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第 2 の行動は心理的に安全な場をつくること(心理的安定性の構築)
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第 3 の行動は失敗から学ぶこと,
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第 4 の行動は職業的,文化的な境界をつなぐことである.
なぜ、連鎖かと言いますと
第 2 の行動である心理的安全性の構築のためには,
第 1 の行動であるフレーミングが先行して実践されている必要があり
第 3 の行動である失敗から学ぶことを実現可能にする土壌があることで
他の集団との協働を活性化し,
集団のイノベーションや創造的パフォーマンスを引き出す第 4 の行動へ繋がる、と言われているからです。
個人でできることは?「ストレッサー」との向き合い方
では、一人では何もできないの?とか、集団の動きと言ったって、個人の集まりでしょ?とのご指摘、ごもっともです。
個人で集団に関わるとき、まずは、その集団に所属すべきと考える理由を、ご自身に問いかけてみましょう。何のために、その集団に留まりたいと願うのか、己の問うのです。
「業務命令だから」、であったり、「クラスメイトだから何となく」、というように、主語がご自身ではなく、他人軸で行動しているとしたら、集団に存在する意味や価値を、ご自身で見つけられていないよ、という兆候です。
主語をご自身に置くようになる、こんなときに役立つ考え方は、首尾一貫感覚(sense of coherence;SOC)/ストレス対処力です。
3つの構成要素があるのですが、
有意味感:自分にとって、人生や日々の出来事、仕事などを「意味や価値のある」課題だと思うことができるかどうか、という考えです。解決に向けた努力のしがい、苦労のしがい、挑戦のしがいを感じられているという認識、とも言われており、集団での立ち居振舞い方に影響を与えます。
なぜかというと、取り組む課題に「意味や価値がある」と思えることは、将来や集団の役に立つ行動ができていると、己を肯定的に捉えられているとも、言い換えられるからです。
同時に、自分の存在や行動、発言が、自分自身や社会にとり「価値がある」と認識できることは、「心理的安定性」を強化することにも働きます。
まとめに代えて
世間は狭いようで広く、何かの漫画ではありませんが、社会通念上、為すべきことをされていれば、いつか必ず、ご自分の居場所、心地よい場所や仲間に出会えるものです。
もし色々お試しになり、その場所に留まる理由がなくなったら、速やかに逃げましょう。
新年度、皆様に心地よい春風が届くことを願っています。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/iken/34/1/34_34-11/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsqsh/15/4/15_366/_article/-char/ja/
