
人間関係がしんどくなるときとは?
年度末、進学、就職、昇進など、3月は4月に向けて、それぞれの立場で準備をする季節。 何となく理由がなく、「しんどい」と思うことはありませんか? その理由と、お付き合いのコツをお話ししましょう。
しんどいってどんな感覚なのでしょう
暑さ寒さも彼岸まで、とは良く言われますが、気候が安定せず、花粉も飛び、素直に春を喜べない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
昇進、降格、配属変更、進級や進学等々、これからの変化が、良い方向にも、難問に向かう方向にも、一気に起こる季節ですね。
「場」がしんどくなる、という考え方について、研究をご紹介します。
社会福祉士の原田武彦による精神障害者の就労継続の阻害要因に関する研究です。
ご自分の精神障害があるということを伝えたときの就労、伝えていないときの就労、それぞれ就労継続が難しくなる要因について、当事者にインタビューをした内容を整理しています。
この研究では、障害があると本人が説明している状態であっても、
①コミュニケーション障害による不安:自分のことをうまく伝えられない・見えない障害による無理と葛藤・現場の人間関係のしんどさ
②距離をおかれ警戒される不安:壁を作られる・冷たくされる・よそよそしくされる
③周囲の理解不足と人間関係の変化による不安:周囲の理解不足・就労時間への配慮不足・スタッフの頻繁な変更
により、就労継続が困難になっていく、という研究結果でした。
ご承知の通り、私たちは一人では生きられません。
もし、誰の世話にもなっていない、という方がいたら、どこにお住まいですか?と問います。
眼前にはお目にかかってはいないでしょうが、食べ物を作る人、運ぶ人、売る人を経ないと、購入品は手に入らないのですから。
人だけではなく、自然も生きるための資源ですし。
だから、「場」に所属することが必須事項であり、とても難しいこと。
いとも簡単にできているように見える他者も、お腹のなかでは不安と戦っている可能性は十分にあり得るのです。
そして、「場」にいるべきと思うので、どのように存在していればよいか悩み、時に行動がしづらくなります。
これが、しんどさ、の中身の一つです。
しんどい、との向き合い方① 「カームダウン」をご存じですか?
激しい運動をしたあと、「クールダウン(クーリングダウン)」することは馴染みがあると思います。
日本臨床整形外科学会のホームページによれば、
『運動によって興奮状態にある身体諸器官を鎮静化させ、身体(特に筋肉中)の疲労物質(二酸化炭素や乳酸)を体外に排出し、疲労回復を促進して心肺機能への負担を軽減させます。また、身体的緊張だけでなく心理的緊張を取り除き、運動後の心地良い状態へと導く作用があります。』と示されています。
実は、日々の生活でも、「クールダウン」は必要です。
onとoffの生活の切り替えがスムーズになると、しんどい、が少しだけ和らぐものです。
では、どうやって切り替えるのでしょう。
実は、精神的な「クールダウン」が「カームダウン(ルーム)」です。
エコモ財団のホームページによれば、発達障害者が「〝パニック〟が生じた時に冷静になるためのスペースあるいはルーム」と、もう一つは「静かなところに行きたくなったら過ごす場所」で、パニックを予防することを目的としたスペースあるいはルームを指しますが、ご存じでしょうか。
記憶に新しいところでは、大阪万博では、会場内にカームダウン・ルームが作られていました。
また、近年、羽田空港を始めとする全国の空港、一部の大学には、すでに設置されています。
人は目を開けている限り視覚情報、様々な音つまり聴覚情報、空気の感覚などの触覚情報など、様々な情報を処理し続けます。
「場」に所属しているときに、見えない壁を感じるというのも、これらの情報から形成されている感覚です。
なので、しんどさを感じたら、目からの情報、耳からの情報、空気感を遮断してほっこりする、つまり自前のカームダウンルームがオススメかもしれません。
静かな場所、ごちゃごちゃしておらず、目からの情報が複雑ではない場所
適切な温度感覚で、外部からの刺激を遮断する空間で、ひとりたたずんでみてはいかがでしょう。
大好きな飲み物、穏やかな音楽などを聴きながらでも、もちろん、文字通り「何もせず」、ひとりでぼんやりするだけです。
ご自宅で作ることが難しかったら、お気に入りの場所を探してみても良いでしょう。
お気に入りの喫茶店、公園、どこかのデパートの屋上、川や山、どこでもです。
1人で「ほっこり」できる場所に、ふらっとでかけて、時間を忘れて過ごすときがあってもよいと思います。
しんどい、との向き合い方② ご自身が感じていることを、ご自身でもう一度整理してみましょう。
ご自身が、漠然と感じる「しんどい」の理由と向き合うこと、これも対策の一つです。
漠然と感じてしまう、その理由を知り、そういうふうに考える必要が本当にあるのか、考える、という向き合い方です。
日本認知療法・認知行動療法学会のホームページには、
「ある状況下における患者の感情や行動は,その状況に対する意味づけ・解釈である患者の認知によって規定される」
もう少し簡単にお話すると、それそれの考え方のパターンがあり、そのパターンが時にご自身を追い詰めてしまうことがある、ということにつながることを意味しています。
このように、認知療法、認知行動療法は、自分を追い詰めてしまう考え方を変えて、しんどさから抜け出せるようになることを、手助けしてくれます。
たとえば、なんとなくしんどい、という理由の例を紐解いてみましょう。
*【誰かに何かを直接的に言われたわけではなかったり、意図的に避けられた行動をとられたわけではなかったりにも関わらず】、*ご自身がそのように「感じてしまう」、つまり「壁を作られた」「冷たくされた」「よそよそしくされた」と捉えてしまっていないでしょうか。
そして、このように、実際にそのように行われたと「思い込み・解釈してしまう」ことで、ご自身を追い詰めてしまうのです。
「だって、○○さんは、こんな風に避けるような素振りをしたんだから、自分の気のせいじゃない」とか
「最初は優しかったのに、話しかけても気がつかれなかったから、自分の勝手な思い込みではない」という声が聞こえてきました。
もちろん、こういう具体例がある場合は、私のお話とは少し異なります。
ただ、もし、【誰かに何かを直接的に言われたわけではなかったり、意図的に避けられた行動をとられたわけではなかったりにも関わらず】
という状況であれば、のお話です。
実はこういう感覚は、昇進、進学など、自分にとって本来は望みが叶い、幸せと感じる事柄でも、生じる感覚です。
むしろ、大抜擢だったり、周囲に第一志望を断念している方がいるなど、自分だけとびぬけて幸せになるようなシチュエーションのときのほうが、感じやすいかもしれません。
いずれにせよ、何が、しんどい、の理由なのか、ご自身に問いかけて、紙に書きだしたり、誰かに話したりすることで、ふっと肩の力が抜けるかもしれません。
認知療法・認知行動療法は心理療法の一つとして、近年公認心理師も対応できるようになりました。
ご自身お1人では、向き合いきれないなぁ、と思われたら、ご相談なさることもオススメします。
参考文献
https://oka-pu.repo.nii.ac.jp/records/2440
https://www.ecomo.or.jp/barrierfree/pictogram/calmdown-cooldown/
