
つらくしんどいときに助けとなるモノ・コトたちは?
人はなぜ一人では生きていけないのでしょうか。自分の両手でできることはごく僅かであり、様々な他者の力を借りていることは、当たり前のことです。でも、辛くてしんどくなると、この当たり前の知識を忘れがちとなります。新年度から1か月が経過し、環境の変化についていきづらいと感じられるとき、この当たり前のことに目を向け直してみると、ほっと肩の力が抜けるはずです。では、私たちを支えるモノ・コトが何であるか、改めて見つめてみましょう。
ストレッサーは対処できるもの?
人は一人では生きていないという前提
人は一人では生きていけないものです。
たとえば、食事一つとってみても、野菜は誰かが育て収穫し、誰かが梱包し、誰かが運送し、誰かが販売してくれなければ、購入することはできません。また、ご自身で買い物にいけない場合は、誰かが購入し自宅まで運んでもらわねばなりません。自給自足の生活をする、としても限界があるのは、容易にご理解いただけると思います。
だから、人は一人では生きていけないし、生きていないのです。
だから、ストレッサーは誰か、何かと共に向き合うことができます。
自分の周りの存在
では、人はどうやって生きているのでしょう。
実は、人は自分以外の「何か」の中にいます。
そして、「何か=環境」がストレッサーの対処を手伝ってくれるのです。
環境、といっても、物理的なことだけではありません。
生きている限り、人は自分と自分の周りにあるモノ・コトたちとともにいます
広い意味での「環境」について、確認していきましょう。
自分の周りにある「環境」①国際生活機能分類ICF
WHO(世界保健機構)では、2001年5月の第54回総会において、「ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)」を採択しました。健康状況と健康関連状況,結果,決定因子を理解し,研究するための科学的基盤の提供が主な目的であり、「人の健康のすべての側面と,安寧(well-being)のうち健康に関連する構成要素のいくつかを扱うものであり,それらを健康領域および健康関連領域として記述する」ものです。つまり、簡単にお話すると、健康に人が生きるための人のありようをこの分類ですべて示すことができる、とされています。
ここに、自分の周りにある「環境」つまり「環境因子」があります。中身をちょっと覗いてみましょう。
環境因子の内容
ICF分類での環境因子は、以下のように大きな分類がされています。
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e1製品・技術 (生産品と用具)
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e2自然環境と人為的環境の変化 (自然環境と人間がもたらした環境変化)
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e3支援と関係
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e4態度
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e5サービス・制度・政策
e1 製品・技術 では次のような下位項目があります
日々の活動において用いる装置や生産品全般です。
ペースメーカーなど体内に取り込むもの、コミュニケーションで用いるもの、自転車など外出時に使うものも含まれます。
また仕事で使用するような様々な機械や、公共の施設の設備も該当します。
ご自身の資産も大切な環境として取り扱われます。
e2 自然環境と人為的環境の変化では、次のような下位項目があります。
私たちが住んでいるこの地理的環境、人口の程度、様々な災害も該当します。
忘れてはいけないのは、音や光、外界と区切りをつけた内部の空気もそうです。
e3 支援と関係では、次のような下位項目があります。
家族・親族・友人をはじめ、自分を取り巻く人が該当します。
仕事上の上司、部下の関係もそうです。
私たちのような専門職も環境として位置づけられます。
e4 態度では、次のような下位項目があります。
家族・親族・友人たちの、仕事上の上司・部下、専門職の立ち居振る舞い、態度が該当します。
また、社会的規範、常識的な振舞いといった、自分が存在する集団で求められた立ち居振る舞いについても位置づけられます。
e5 サービス・制度・政策では、次のような下位項目があります。
ここでいうサービスとは、社会が提供する支援の仕組み、組織を指します。
例えば、食べ物などの流通の仕組み、医療保険や介護保険などの社会の制度、公共交通機関のネットワーク、市区町村や都道府県で提供される人や財産を保護するための仕組みなどが該当します。
これらの各環境について、改めて理解を深めることは、様々な課題・ストレッサーに活用できる可能性が秘められているため、有益です。
同時に、人と環境という考え方は、とても大切です。家族だから側にいることが当たり前の時代ではなくなりました。だからこそ、これらの環境が現在ご自身にどのような存在としてあるのか、どのように活用するか考えることが求められているのです。
自分の周りにある環境②汎抵抗資源(GRRs)
健康生成論を提唱した、アントノフスキーは、健康に生きることを支えている【誰か】のことを総称して「汎抵抗資源(GRRs)」と呼びました。
アントノフスキーによる定義は「身体的、生化学的、物質的、認知・感情的、評価・態度的、関係的、社会文化的な、個人や集団における特徴のことで、あまねく存在するストレッサーの回避あるいは処理に有用であるもの」としています。
中身を見てみましょう。
汎抵抗資源の内容
内容は以下の6つの分類です。
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身体的、生化学的汎抵抗資源:遺伝的や神経免疫学的な資源
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物質的汎抵抗資源:個人においてはカネ、体力、住居、衣類、食事等、個人と個人の関係においては、権力、地位、サービスの利用可能性
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認知・感情的汎抵抗資源:知識や知性、知力とアイデンティティ
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評価・態度的汎抵抗資源:コーピング(合理性、柔軟性、先見性)
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関係的汎抵抗資源:ソーシャルネットワーク、ソーシャルコミットメント、ソーシャルサポート等
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社会文化的汎抵抗資源:宗教、哲学等
何が書かれているんだか、分かるような、分からないような、とお思いになられたのではないでしょうか。
さすが学者さんらしく、かなり難しく書かれていますね。
両者の違いーまとめに変えてー
実は、両者は区分が異なるだけで、ストレッサーの対処に活用する項目に差はありません。
ICFは環境因子以外の各項目が相互に影響をし合うシステムのため、他の場所に記載されていても、包括的は課題に対処するときに活用しているという認識になるからです。
分かりづらい汎抵抗資源ですが、特徴的なのは、1.身体的、生化学的、や3.認知・感情的、4.評価など、自分自身のことを対処するときに活用すべき技能(資源)として項目として挙げている点です。
ICFでは、この項目は別のカテゴリー(心身機能・構造)で説明されています。
また6.社会文化的汎抵抗資源ですが、これは、ICFでは個人因子として扱われています。
それ以外はICFの環境因子で述べられている内容と同じと捉えていただいて問題ありません。
2.物質的汎抵抗資源(個人においてはカネ、体力、住居、衣類、食事等、
個人と個人の関係においては、権力、地位、サービスの利用可能性)
は、ICFのe1製品・技術の一部とe5のサービス・制度・政策の一部です。個人と個人の関係においては特に、e3支援と関係やe4態度も深く関わります。
5.の関係的汎抵抗資源(ソーシャルネットワーク、ソーシャルコミットメント、ソーシャルサポート等)は、
e3支援と関係とe5サービス・制度・政策の一部が主に関わります。
様々なストレッサー(課題)は、自分一人ではなく、これらの様々な環境・資源を活用すべきであり、私たち専門家に頼るというのも、対処方法のひとつです。様々に見方を変えて、心穏やかに過ごしていただくための心持ちを見つけられるよう、願っています。
参考文献
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