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仕事や学校に行くことが苦しい、つらいと感じている皆さんへ
執筆者アイコンアンドウ2026年4月15日 10:26

仕事や学校に行くことが苦しい、つらいと感じている皆さんへ

新年度が始まり、仕事や学校がスタートする時期において、不安や悩み、葛藤などが心に生じてくることは誰しもにあることだと考えられます。 そのような時の心の持ち方、考え方や捉え方、対処方法などについて、心理学者や精神科医が残した言葉なども併せて、お伝えしながら皆さんのお力になることが出来ればと思っています。

新年度に入り、仕事や学校に行くことが苦しい、つらいと感じている方へ

 

朝、目が覚めた瞬間から気が重い。布団から出たくない。
支度をしながらも足取りが重く、「できればこのまま休んでしまいたい」と感じる。

 

そういった感覚や思いは、決して特別なものではないと私は考えています。

それらはむしろ、多くの人が日々の生活の中で経験している、ごく自然な心身の反応であると言えます。

そして、そのように感じながらも日々を過ごしていること自体が、すでにとても大切な努力の積み重ねでもあると私は捉えています。

「つらい」「しんどい」と感じながらも、こうして日常を続けようとしていることには、それだけで意味があるのだと思われます。

また、つらさやしんどさについて考えたり、「このままでいいのだろうか」と立ち止まっていることにも、状況をよりよくしようとする気持ち、解決を目指そうという思いが含まれていると考えられます。「変わりたい、少しでも楽になりたい」と感じるその感覚自体が、前に進もうとする力の一部でもあると私は思っています。

 

精神科医のヴィクトール・フランクルは、
「反応の仕方を選ぶ自由が人には残されている」と述べました。
ただし、その“反応”は、常に前向きである必要はありません。つらさを感じることもまた、人が置かれた状況に対する自然な応答の一つです。

「行かなければならない」「頑張らなければならない」と自分を奮い立たせる一方で、身体や気持ちがついていかないとき、人は自分を責めてしまいがちになってしまうと言われています。
しかし、その苦しさは、これまで無理を重ねてきたサインとも言えます。

心や身体が限界に近づいたとき、それを知らせるかのように現れる反応でもあります。

 

臨床心理学者のカール・ロジャーズは、
「あるがままの自分を受け入れたとき、人は変わり始める」と述べています。
無理に前向きになろうとするのではなく、「今日はしんどいと感じている自分がいる」と、その状態をそのまま認めること。

それ自体が、回復に向けた重要な一歩となることがあります。

 

催眠療法を取り扱っていた精神科医、ミルトン・エリクソンの視点も大切だと私は捉えていました。
エリクソンは、「人はすでに、自分の問題を解決するための資源を持っている」と考えました。
今この瞬間、つらさを感じながらも生活を続けていること自体が、その人の中にある力の現れとも捉えることができます。

一方で、つらさの中にあっても、すでに何かに取り組めている自分がいることも見落とされがちであると言えます。
たとえば、時間通りに起きたこと、身支度を整えたこと、あるいは「行きたくない」と感じながらも職場や学校に向かったこと。

それらは一見当たり前の行動に見えて、実際には相応のエネルギーを要する動きであると考えられます。

 

「嫌われる勇気」でも有名な、精神科医のアルフレッド・アドラーは、
「人は貢献していると感じられるときに価値を実感する」と述べました。
日々の小さな行動も、生活を維持し、自分や周囲を支える「貢献」の一部であると捉えることができます。

人は「できていないこと」には目を向けやすく、「できていること」には気づきにくい傾向があります。
しかし、つらさを抱えながらも日常を維持しているという事実には、それ自体の意味と価値が含まれています。

 

そして、ここで、「頑張る」という言葉の意味を少し緩めてみることも大切であると私は考えていました。
全力で成果を出すことだけが頑張りではないと言えます。そ

の日の自分の状態に合わせて行動すること、必要であれば立ち止まることも含めて、「その人なりの頑張り」と言えます。

 

たとえば、
・今日は最低限の業務にとどめる
・信頼できる人に頼る
・意識的に休憩を長めにとる

こうした選択は、状況に応じた適応的な対処行動であると考えられます。

 

精神科医のドナルド・ウィニコットは、
「ほどよく機能すること(good enough)」の重要性を指摘しました。
常に最善である必要はなく、「今の自分にとって無理のない水準」でやり過ごすことが、長期的な安定につながることもあります。

 

ここからは、日常の中で比較的取り入れやすい工夫をいくつか挙げます。

 

まず、「行動を小さく分ける」ことです。
「職場に行く」という大きな目標ではなく、「起きる」「顔を洗う」「服を着る」といった単位に分けて捉えることで、心理的な負担が軽減されやすくなります。

 

次に、「できたことをあえて言葉にする」ことです。
一日の終わりに、「今日はこれができた」と短く振り返るだけでも、自分の状態を客観的に把握しやすくなります。

また、「あらかじめ余白を作る」ことも有効です。
一日を詰め込みすぎず、「ここで少し休む」と決めておくことで、消耗の蓄積を防ぎやすくなります。

 

さらに、「途中でやめてもよい前提を持つ」ことも一つです。
「この時間までやってみて、難しければ切り上げる」と決めておくことで、取り組み始めるハードルが下がることがあります。

 

そして、「身体の状態を整える」ことも重要な取り組みの一つです。
朝に外の空気を吸う、温かい飲み物を飲む、ゆっくり呼吸を整えるといった小さな行動は、ただ単にリフレッシュに繋がるという意味だけでなく、心身の緊張を和らげる助けになったり、自分の身体は自分の意思で動かしている、機能させているという自覚を生じさせる効果があり、それが主体性の獲得や、自己肯定感の回復にも繋がると言えます。

 

精神科医のエーリッヒ・フロムは、
「理解されることは、人にとって深い癒しとなる」と述べています。
可能であれば、「つらい」と感じていることを誰かに言葉にしてみること、全てではなくとも相談してみることも、負担を軽くする一助になります。

つらさを抱えながら日々を過ごしていること、それ自体がなんとか良い方向へと向かって行こうとする心の動き、一歩であると私は思っています。

 

無理に大きく変わろうとする必要はないと私は思っています。

今自分ができていることに目を向けながら、その時々の自分に合った関わり方を探していくこと。それが、結果として無理なく続けていくための土台となります。

 

仕事や学校に向かう足取りが重い日があっても、その中で一歩を踏み出しているという事実の意味は、決して小さくはないと言えます。

うまくいかない日があっても、思うように動けない日があっても、それは決して後退ではなく、そのときの自分なりに過ごした一日でもあります。
大きく前に進むことだけが進歩ではなく、とどまることや、やり過ごすこともまた、その人にとって必要な時間であることがあります。

ただ、今日の自分にできる範囲で過ごしているという事実は、確かに積み重なっていきます。

その積み重ねは目に見えにくいものかもしれませんが、確実にその人自身を支える力になっていきます。

仕事や学校に行くことが苦しい、つらいと感じた時にこそ、今の自分の状態をそのままに、無理のない一歩を重ねていくことを大切にしてみて欲しいと私は思っています。この記事が、前に進もうとする人たちの心の支えの一つのなることを信じています。

参考文献

・ヴィクトール・フランクル『夜と霧』 URLは登録されていません
・カール・ロジャーズ『人間尊重の心理学』 URLは登録されていません
・アルフレッド・アドラー『人生の意味の心理学』 URLは登録されていません
・ドナルド・ウィニコット『母と子の成熟過程』 URLは登録されていません
・エーリッヒ・フロム『愛するということ』 URLは登録されていません
・ミルトン・エリクソン に関する臨床講義・事例集 URLは登録されていません

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