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人と人の間で「板挟み」になってしまいがちな人へ
執筆者アイコンアンドウ2026年4月25日 14:23

人と人の間で「板挟み」になってしまいがちな人へ

人と人との間に立ち、板挟みになりやすい人が抱えやすい心理的負担と、その関わり方について心理学的な視点からまとめています。 特に「バウンダリー(境界)」の考え方を手がかりに、相手の課題と自分の課題を区別しながら、無理のない距離感で関わることの大切さを紹介しています。 あわせて、双方に誠実に向き合おうとする姿勢は「どちらにもいい顔をしている」のではなく、自分なりの軸をもった関わりとして捉え直せること、そしてその思いを言葉にして伝えることが、人間関係を保ちながら自分自身を守るヒントになることをお伝えしています。

職場や家庭、友人関係のなかで、気づけば人と人との間に立つ役回りになってしまう、そういったことを何度も経験したことはありませんか?

 

学校や職場、そして家族や友人との関わりは、日々の生活を送るうえで自然に発生するものだと言えます。

その中で、人と人との間に立って話を聞いたり、関係を取り持ったりしなければならないことは、どうしても出てきてしまうことであると思われます。

そういった役回りに立つ人とは、人の話をしっかりと聞く力があったり、相手を気遣い、思いやる力がある人であるといえますが、双方の言い分が分かるからこそ、どちらか一方に寄ることが難しく、調整や配慮に力を注ぎ続けてしまうことはあるのだと思われます。

そうした「板挟み」の状態は、周囲から見える以上に心理的な負荷が大きいものであると考えられます。

 

こうした立場にいる人は、ときに「どちらにもいい顔をしていると思われていないだろうか」と悩むことがあるのではないでしょうか?

これは、それそれの相手に丁寧に向き合おうとしていることを示しており、必ずしも両方にいい顔をしようとしているのではなく、関係への誠実さとして理解することもできます。ですが、実際に相手から、どちらの見方であるか、といったことを問われたときにどう答えればいいか悩むことでもあるといえます。

 

ここで手がかりになるのが、心理学でいう「バウンダリー(境界)」の考え方です。

バウンダリーとは、自分と他者との間にある心理的な境界線を指し、相手の課題と自分の課題を区別するための視点でもあります。

 

人間関係に巻き込まれやすい人は、この境界があいまいになりやすい傾向があると言われています。その理由としては、相手の感情を自分の責任のように感じたり、双方の期待に応えようとして抱え込みすぎたりすることがあると考えられます。しかし本来、他者同士の葛藤まで自分が引き受ける必要はないと言えるため、そこでどのような視点を持つべきかが重要になってきます。

 

バウンダリーとは、関係を切るための線引きではなく、無理なく関わるための適切な距離感を保つことでもあります。

この視点から見ると、「どちらにつくか」よりも、「自分はどう関わるか」が重要になってきます。

板挟みのなかで消耗しやすい人ほど、黙って自分一人で頑張りすぎる傾向があると言われています。しかし時には、自分のスタンスを言葉にすることも役に立つと考えられます。

たとえば、

  • ・「どちらかに合わせているのではなく、それぞれとの関係に自分は誠実でいたい」

  • ・「どちらか一方の味方としてではなく、双方に対して自分なりにできることを今、精一杯尽くしたいと思っている」

  • ・「それぞれの話を聞くとき以外は、いつも通りの自分で誠実に接していたい、それが双方にとってもいい影響をもたらすと信じている」

 といった形で意思表明をしてみるといいかもしれません。

 

これは立場を曖昧にすることではなく、むしろ関わり方を明確にすることに近いものです。

重要なのは、「どちらにもいい顔をする」のではなく、「それぞれへの対応に全力を尽くしている」という自己理解と、それを必要に応じて表明できることであるといえます。この違いは小さいようでいて大きいものがあると私は捉えています。

 

前者は他者評価に振り回されやすいところがあると思われますが、後者には自分なりの軸、信念をしっかりと示すことができるというメリットがあると言えます。

 

人と人の間に立つことが多い人は、ときに誤解されやすい立場となってしまう人でもあると思われます。しかし、その立場には、人間関係を単純な「敵味方」で見ないというとても大切な視点も含まれています。だからこそ、板挟みになってしまうことを「弱さ」や「優柔不断」というような視点だけで捉えないようにしていきつつ、もう少し広い視点で考えていくといいのではないかと私は思っています。

 

必要なのは、自分のバウンダリー(境界)を保ちながら、どう関わっていくかを広い視点で、主体的に選ぶことなのかもしれません。

・「どちらにもいい顔をしているのではない」
・「それぞれとの関係に、かかわる瞬間ごとに誠実であろうとしている」

 

そのように捉え直せていったとき、板挟みの苦しさの中にも、自分なりの軸や信念が見えてくるようになり、安心して関係性を築き、維持していくことのヒントを得ていくことができるのではないかと私は思っています。

参考文献

・ヘンリー・クラウド、ジョン・タウンゼント (著) 中村 佐知、中村 昇 (翻訳) 「境界線(バウンダリーズ)」 地引網出版 URLは登録されていません
・家族療法研究 Vol.37 No.3 特集 家族療法の技法と実践の現在 金剛出版 URLは登録されていません
・《中釜洋子選集》家族支援の一歩──システミックアプローチと統合的心理療法 遠見書房 URLは登録されていません

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