
公認心理師が解説|子どもの自己肯定感を下げているのは、悪意のない言葉かもしれない
「褒めているのに、なんか響いていない気がする」「甘やかしになっていないか不安で」——そんな迷いを抱えながら、毎日子どもに声をかけているお父さん、お母さんへ。自己肯定感を下げているのは、悪意のある言葉ではなく、愛情から出た何気ない一言かもしれません。公認心理師が日常会話の中でできることをお伝えします。
「これって甘やかしになっていませんか」
「先生、最近SNSで自己肯定感の大切さをよく見かけるようになって、意識して褒めるようにしているんです。
でも……これで合っているのかどうか、正直わからなくて」
そのお母さんは、少し困ったような顔で続けました。
「褒めすぎると甘やかしになるんじゃないかって。
怒るのもよくない、でも何でも褒めればいいわけでもない気がして。
結局どうすればいいのか、迷ってしまって」
この迷いを、私はとてもよくわかります。
自己肯定感という言葉は、ここ数年でずいぶん広まりました。
テレビでも取り上げられ、SNSでも「子どもへの声かけ」に関する投稿が毎日のように流れてくる。
情報が増えれば増えるほど、「正しくやれているか」という不安も増えていく。
そして「褒めているのに、なんか子どもに響いていない気がする」「これって本当に自己肯定感につながっているのかな」という感覚を持ちながら、それでも毎日声をかけ続けている。
そんな親御さんが、本当にたくさんいらっしゃいます。
「褒める」と「甘やかす」は何が違うのか
まず、多くの方が気にされている「褒めること」と「甘やかすこと」の違いから整理したいと思います。
甘やかすというのは、子どもが何をしても無条件に許してしまうこと、あるいはやるべきことを代わりにやってあげてしまうことです。
子どもが困難に向き合う前に、親が先回りして取り除いてしまう。
そういう関わり方が「甘やかし」と呼ばれるものに近い。
一方で、自己肯定感につながる「受け取り方」は、少し違います。
「テストで100点とったね、すごい」という言葉は、結果への評価です。
これ自体は悪くありません。
しかし、これだけが繰り返されると、子どもは無意識のうちに「いい結果を出したときだけ、自分は認められる」と感じはじめることがあります。
自己肯定感の土台になるのは、結果への評価ではなく、「あなたがそこにいること」への承認です。
「今日も学校行ったね」「一生懸命考えてたね」「難しかったのに最後までやったね」——そういう、結果ではなく存在や過程を見た言葉が、積み重なって土台になっていく。
甘やかしとの違いはここにあります。
何でも許すのではなく、「あなたのことをちゃんと見ている」という姿勢を言葉にすること。
それが自己肯定感を育てる声かけの本質です。
自己肯定感の正体——「自信」とは少し違う話
「自己肯定感」という言葉は、「自信」と混同されることがよくあります。
しかし、少し違います。
自信は「自分はできる」という感覚です。
これは経験や成功体験によって育つもので、得意なことや成果に紐づいています。
自己肯定感はもう少し深いところにあって、「自分はできてもできなくても、ここにいていい」という感覚です。
うまくいかなくても、失敗しても、自分という存在そのものへの信頼感。
それが自己肯定感です。
だから、勉強ができるようになっても、運動が得意になっても、自己肯定感が育つとは限りません。
逆に言えば、何かが特別にできなくても、自己肯定感は育てることができる。
そしてこの感覚は、子どもが小さいころから積み重なる「毎日の会話」の中で、静かに形成されていきます。
特別なイベントや、気合いを入れた褒め言葉よりも、何気ない日常のやりとりの方が、実ははるかに大きな影響を持っています。
知らないうちに、自己肯定感を下げてしまう言葉
ここで一つ、少し立ち止まって考えてほしいことがあります。
自己肯定感を育てようと意識している親御さんでも、気づかないうちに逆の方向に働く言葉を使っていることがあります。
悪意は一切ない。
むしろ子どものことを思っているからこそ出てくる言葉です。
たとえば、こんな言葉です。
「なんでできないの」「お兄ちゃんはできてたのに」「それくらいのことでなんで泣くの」「また同じ失敗して」「もっとしっかりしなさい」。
これらの言葉に共通しているのは、子どもの「今の状態」を否定するということです。
できない自分、泣いている自分、失敗した自分——そういう状態の自分を「ダメだ」と感じさせる方向に働きやすい。
もう一つ、意外と見落とされがちなのが「結果だけを評価する言葉」です。
「100点すごい」「一番だったね」「よくできた」。
これは褒め言葉ですが、裏返すと「100点じゃなければすごくない」「一番じゃなければよくない」というメッセージにもなりえます。
子どもはその裏側を、敏感に受け取っていることがあります。
育てる日常会話の、3つのポイント
では、自己肯定感につながる言葉かけとはどんなものか。
特別な言葉は必要ありません。
日常会話の中で意識できる、3つのポイントをお伝えします。
結果より「過程」を見る
「できた」「できなかった」ではなく、そこに至るまでの様子を言葉にします。
「最後まで諦めなかったね」「難しそうだったのに、ちゃんと考えてたね」「今日も頑張って行ったね」。
子どもが「自分のプロセスを見てもらえている」と感じる経験が、自己肯定感の土台になります。
「いるだけでいい」を伝える
何かをしたから認める、ではなく、そこにいること自体への言葉を時々かけてみてください。
「今日もそばにいてくれてよかった」「あなたがいると元気出るな」。
これは甘やかしではなく、存在への承認です。
感情を「言語化」をつけてあげる
子どもが何かに怒ったり、泣いたり、黙り込んだりしたとき、「うるさい」「しっかりして」ではなく、「悔しかったんだね」「怖かったのかな」と感情を言葉にしてみてください。
自分の気持ちが言語化されると、子どもは「この感情を持っている自分は変じゃない」と感じることができます。
声かけを続けたいのに、できないとき
ここまで読んで、「こういう声かけをしたい」と思ってくださった方も多いと思います。
しかし同時に、こんな気持ちが浮かんでいる方もいるのではないでしょうか。
「わかってはいる。でも余裕がないとき、気づいたら怒鳴ってしまっている」
自己肯定感を育てたい。
穏やかに関わりたい。
そう思っているのに、疲れているとき、余裕がないとき、子どもの行動にどうしても感情が先に出てしまう。
そしてその後で罪悪感が来る。
この「わかっているのに止められない」という感覚は、意志の弱さではありません。
感情が高ぶった状態では、どんなに「こうしよう」と思っていても、その命令が届きにくくなる仕組みが、私たちの脳にはあります。
言葉かけを変えるためには、その前の「感情の爆発」というループを、別のところから変えていく必要があります。
怒りが爆発するまでの仕組み、爆発の前に気づくための練習、その場で使える具体的な手順——そうしたことについては、こちらの記事で詳しく書いています。
https://note.com/tasty_ibis8480/n/n4dcd4956aa60?sub_rt=share_sb
読んでいただいた皆さんの「また怒鳴ってしまった」という自己嫌悪の夜が、少しずつ減っていくことを願っています。
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