
「幸福度が高い人は"頑張りすぎない"」|心理学から見る"心が折れにくい人"の5つの特徴
「あ、また頑張りすぎてしまった」 そう気づいた時、もう夜中の12時を回っていた——そんな経験、ありませんか。 カウンセリングの現場に長く関わっていると、ある共通点に気づきます。心が折れる手前まで追い詰められてしまう人のほとんどが、「弱い人」ではないんです。むしろ逆で、誰よりも責任感が強くて、人に迷惑をかけたくなくて、「自分がやらなきゃ」と思い続けてきた方ばかりです。 以前、こんな場面がありました。はじめてカウンセリングに来られた30代の男性が、開口一番こう言ったんです。「自分、別に大したことないんですよ。もっとしんどい人が来る場所なんじゃないかと思って、来るのを迷ってました」と。でも話を聞いていくと、何ヶ月も睡眠が浅い状態が続いていて、仕事中も頭がうまく動かない感覚があるとのことでした。 「自分はまだ大丈夫」と思っている間に、じわじわと消耗している。そういう方が、本当に多いんです。 だからこそ、伝えたいことがあります。
読む前に、一度だけ立ち止まってみてください
「あ、また頑張りすぎてしまった」
そう気づいた時、もう夜中の12時を回っていた——そんな経験、ありませんか。
カウンセリングの現場に長く関わっていると、ある共通点に気づきます。心が折れる手前まで追い詰められてしまう人のほとんどが、「弱い人」ではないんです。むしろ逆で、誰よりも責任感が強くて、人に迷惑をかけたくなくて、「自分がやらなきゃ」と思い続けてきた方ばかりです。
以前、こんな場面がありました。はじめてカウンセリングに来られた30代の男性が、開口一番こう言ったんです。「自分、別に大したことないんですよ。もっとしんどい人が来る場所なんじゃないかと思って、来るのを迷ってました」と。でも話を聞いていくと、何ヶ月も睡眠が浅い状態が続いていて、仕事中も頭がうまく動かない感覚があるとのことでした。
「自分はまだ大丈夫」と思っている間に、じわじわと消耗している。そういう方が、本当に多いんです。
だからこそ、伝えたいことがあります。
心が折れにくい人というのは、鋼のメンタルを持った特別な人ではありません。「疲れたな」と気づいた時に、少しだけ立ち止まれる人のことです。
この記事では、心理学の視点から「幸福度が高い人に共通する習慣」を整理しながら、日々の臨床の中で実際に見てきた場面もまじえてお伝えしていきます。完璧じゃなくていい。強くなくてもいい。そのための話です。ぜひ最後まで読んでみてください。
幸福度が高い人は「頑張りすぎない」——でも、それって本当?
まず少し、誤解を解かせてください。
「幸福度が高い人は頑張りすぎない」と聞くと、「じゃあサボっていいってこと?」と思う方もいるかもしれません。でもそうじゃないんです。
大切なのは"頑張らない"ことじゃなくて、「頑張る場面」と「回復する場面」を意識的に切り替えられることです。ウェルビーイング研究で知られるソニア・リュボミアスキー(Sonja Lyubomirsky)の研究でも、幸福度が高い人は感情の調整が上手で、ストレス下でも過度に自己批判しない傾向があることが示されているといわれています(※1)。
つまり、常に全力疾走しているわけじゃない。でも必要な時にはちゃんと動ける。この"緩急"が、長期的な幸福感を支えているといわれています。
「もっと頑張らなきゃ」が止まらない人の心理
カウンセリングの場でよく耳にする言葉があります。
「特別忙しいわけじゃないんですけど、なんか常に焦ってるんです」
仕事を定時で終えたのに「もっとできたんじゃないか」と引きずる。休日に昼まで寝たら、「一日無駄にした」と罪悪感が出る。これといって大きな出来事があったわけでもないのに、なんとなくずっとそわそわしている——そういう感覚です。
以前、カウンセリングで関わった20代後半の女性の方が、まさにそんな状態でした。「友達と出かけても、なんかずっと頭の片隅に仕事のことがあって、楽しいイベントに参加したんだけれども、楽しみきれないんです」と話してくれました。特別な出来事があったわけじゃない。でも、オフの時間でも完全にオフになれない感覚が続いていたそうです。
この状態、心理学では「達成してもゴールが遠のく」感覚と関係しているといわれています。頑張ることが「安心」を生む手段になってしまっているんですよね。止まると不安になる。休むと罪悪感が出る。だから、特に何か追い詰められているわけでもないのに、走り続けてしまう——という構造です。
これは意志の弱さとは別の話です。むしろ、自分に厳しい人ほどこのループにはまりやすいといわれています。
真面目な人ほど疲れやすい理由
真面目な人には、共通した傾向があります。
他人の疲れや感情には敏感なのに、自分の疲れには気づきにくい、という点です。「これくらい普通」「みんなも頑張ってる」「自分だけ休めない」——こういった言葉が頭に浮かびやすい。
以前、40代のある女性の方が、「職場の後輩が疲れてそうだとすぐわかるんです。でも自分が疲れてるかどうかは、正直よくわからなくて」と話してくれました。他者への観察眼が鋭い分、自分自身への注意が向きにくくなってしまっているケースです。
責任感は間違いなく長所です。ただ、それが「自分を休ませることへの罪悪感」とセットになった時、じわじわと心を消耗させていきます。「少し休もう」と思っても、すぐに「でもまだやれる」という声が出てくる。そのせめぎ合いが、さらなる疲弊につながることもあるんです。
"無理し続けること"と幸福度は比例しない
少し驚くかもしれませんが、長期にわたって緊張状態が続くと、成功しても喜べない・休んでも疲れが取れない、という状態になりやすいといわれています。
これは「バーンアウト(燃え尽き症候群)」とも関連していて、厚生労働省「こころの耳」でも「意欲の低下・疲弊・慢性的な消耗感」として紹介されています(※2)。
あるクライアントの方(50代・男性)は、「昔は仕事が終わった後、達成感みたいなものがあったんですけどね。最近は終わっても何も感じなくて」とおっしゃっていました。頑張り続けた結果、喜びを感じる回路が鈍くなってしまっているような状態です。
幸福度が高い人は、頑張ることだけで自分の価値を測りません。「今日ちゃんと休めた」「誰かを頼れた」「自分を守れた」——そういうことにも意味を見出しているんです。
心が折れやすい人に共通する特徴とは
「心が折れやすい人は弱い人だ」という思い込み、実は全然違います。
カウンセリングで関わってきた中で、心が折れる直前まで追い詰められた方の多くは、周囲への気遣いが人一倍強くて、責任感があって、ちょっとやそっとでは「助けて」と言えない人たちでした。
つまり、心が折れにくい人と折れやすい人の違いは"強さの差"じゃなくて、**"回復できるかどうかの差"**なんだと思っています。
自分に厳しすぎる
心が折れやすい方に共通してよく見られるのが、自分への厳しさです。
人には「大丈夫だよ」って言えるのに、自分には「なんでできないんだ」「また失敗した」「自分はダメだ」って言ってしまう。言葉にするとわかるんですが、これって、かなりきつい攻撃ですよね。
あるクライアントの方(40代・男性・会社員)は、プロジェクトで小さなミスをした翌日から、ずっと眠れなくなったと言っていました。「たいしたことじゃないのはわかってる。でも、頭の中でずっと責め続けてしまうんです」と。
その方にこう聞いてみたことがあります。「もし同じミスを後輩がしていたら、どう声をかけますか?」と。少し間があって、「……そりゃ、次気をつければいいよって言いますよ」と。自分には言えないことを、他の人にはごく自然に言える。この自分と他人とでどういえるかの視点が、心を消耗させていきます。
こういうことが積み重なると、回復力はどんどん下がっていきます。
休むことに罪悪感がある
「休みの日なのに、何かしてないと落ち着かなくて」という話を、カウンセリングでよく聞きます。
横になっていても「こんなことしていていいのか」と焦る。動画を見ながらも「時間を無駄にしてる」と思ってしまう。本来は回復のための時間のはずが、罪悪感を生む時間になってしまっているわけです。
カウンセリングで関わったある方は、「休日にぼーっとしてると、なんかこんなんでいいのかと罪悪感で逆に疲れるんです」とおっしゃっていました。休んでいるのに、心は全然休まっていない状態です。
でも本来、休息はサボりじゃない。**心と体を回復させるための"行動"**です。こう言うと少し意外に感じる方もいるんですが、休むことは受動的な怠慢じゃなくて、能動的な回復なんですよね。「何もしない時間」を作ることにも、ちゃんと意味があります。
「ちゃんとしなきゃ」が強すぎる
「ちゃんとしなきゃ」「弱音を吐いちゃいけない」「人に頼るのは迷惑」——こういった信念が強すぎると、心はどんどん休まる場所を失っていきます。
以前、カウンセリングで関わった30代の女性の方が、こんなことを話してくれました。「しんどいって思っても、みんなも同じくらい大変だろうし、と思うと言い出せなくて・・・」と。
周りと比べて「自分だけ特別しんどいわけじゃない」と感じると、助けを求めるタイミングをどんどん後回しにしてしまう。その方は、体に出てはじめて「あ、限界だったんだな」「やっぱり疲れていたんだな」と気づいたとおっしゃっていました。頭では「大丈夫」と思っていても、体はちゃんとサインを出していたわけです。
失敗をいつまでも引きずる、人に頼れない、弱音が出てこない——こうした状態が続くと、心には休まる時間がなくなっていきます。「ちゃんとしていない自分は許せない」という厳しさが、心の底に隠れていることが多いんです。
メンタルが強い人は「回復する力」を持っている
ここで少し、「メンタルが強い人」のイメージを更新してもらえたら嬉しいです。
メンタルが強い人って、何があっても傷つかない人じゃない。落ち込むし、不安になるし、失敗して自信をなくすこともある。でも、**そこから少しずつ戻ってこられる。**それが「心が折れにくい」ということだと思っています。
心が折れにくい人は"落ち込まない人"ではない
「あの人いつも元気そうだな」と思われている人が、実はひそかにつらさを抱えていた——そういうことって、意外とよくあります。
カウンセリングでも、「周りからは明るいって言われるんですけどね」と話しながら、ずっとしんどさを抱えてきた方に出会うことが少なくありません。外から見えている姿と、内側の自分の状態は必ずしも一致しないんです。表面的には見えないだけですよね。見せてないとか。
心が折れにくい人は、落ち込まない人じゃないんです。落ち込んだ後に、自分を責め続けすぎない人です。
「今日はしんどかった」「今は疲れてる」「少し休んでから考えよう」——こういう言葉を、自分にかけてあげられるかどうか。感情を否定しないことが、回復の入り口になるといわれています。
レジリエンス(回復力)が高い人の特徴
「レジリエンス」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。ストレスや逆境を受けた後に、しなやかに回復していく力のことです。
レジリエンス研究の文脈では、「完璧を求めすぎない」「必要な時に助けを借りられる」「自分なりの回復方法を持っている」といったことが、回復力の高さと関連しているといわれています(※3)。
以前、レジリエンスが比較的高いと感じたクライアントの方がいました。うまくいかないことが続いた時期も、深刻に落ち込みはするものの、「まあ、今日はしょうがないか」とどこかで区切りをつけられる方でした。「完璧にできなくても、できた部分があればそれでいい」という感覚が自然に身についていたようです。
大事なのは、「自分は何をすると少し楽になれるのか」を知っておくことです。話すことで楽になる人もいれば、一人の時間で整う人もいる。散歩でも、睡眠でも、音楽でも。方法は人によって全然違います。
ストレスに強い人との違いとは
「ストレスに強い人」というのも、ストレスを感じない人じゃないんですよね。
感じても、早めに調整できる人です。一人で抱え込みすぎない。完璧を求めすぎない。回復する時間を意識的に確保している——こういった習慣が積み重なると、強い負荷がかかっても、折れる前に立て直しやすくなるといわれています。
ちょっとした違いのように見えますが、積み重ねると大きな差になります。毎日少しずつ回復できる人と、回復できないまま次の日を迎え続ける人とでは、半年後・一年後の状態がまったく変わってくるんです。
幸福度が高い人が実践している5つの特徴
特別な才能の話じゃないんですよ、これは。日々の中で、「自分をあまり追い込まない選択」を少しずつしている、それだけのことです。
① 頑張りすぎる前に休む
幸福度が高い人は、限界まで我慢してから崩れるんじゃなくて、疲れが小さいうちに調整します。
「まだ大丈夫」と思っている時ほど、少し早めに休む。これって弱さじゃなくて、心を守るための合理的な判断なんです。
以前、予定が立て込んだ時期に「まだいける」と思いながら予定を詰め込み続けたことがありました。結果、週末になっても頭がぼんやりして、かえって回復に時間がかかってしまったんです。早めに少し抜くだけで全然違う。そのことに、後から気づきました。
カウンセリングで、ある方にこの話をしたら「それ、まさに自分です」と言っていました。「限界まで頑張るのがいいことだと思ってたけど、早めに休む方が結果的に長く動ける気がしてきました」と。視点が少し変わるだけで、休むことへの罪悪感がやわらぐ場合があります。
② 「できない日」があっても自分を責めすぎない
人には調子の良い日も悪い日もあります。それは当たり前のことで、悪い日があることが問題なんじゃない。
あるクライアントの方は、「調子の悪い日があるたびに『やっぱり自分はダメだ』ってなってしまって」とおっしゃっていました。でも話を聞いていくと、調子の良い日も実はたくさんあって、ただそっちは頭に残りにくいんですよね。できない日だけが記憶に残りやすい、という認知のクセがある方でした。
幸福度が高い人は、できない日があっても、それだけで自分の価値を決めません。「今日はそういう日だった」「また整えていけばいい」——そう考えられることが、回復力につながるといわれています。
③ 他人と比較し続けない
SNSを見ていると、他人の成功や楽しそうな瞬間ばかりが目に入ります。それを見続けていると、「自分だけが遅れている」という感覚になりやすい。
カウンセリングで関わった20代の方が、「SNSを見た後、必ず気分が下がるんです」と話してくれました。見るのをやめればいいとわかってはいるけど、やめられない。そしてまた落ち込む、という繰り返しでした。
でも、SNSに並ぶのはハイライトだけです。つらい夜や、うまくいかなかった日は映っていない。その方には、「見た後に気分が下がるなら、それはあなたにとって合わない情報環境かもしれない」とお伝えしました。比べることをゼロにしなくてもいい。ただ、比べ続ける時間を少し減らすだけでも変わってくることがあります。
幸福度が高い人は、他人の基準だけで自分を測りません。自分なりのペースを持っているんです。
④ 小さな安心感や充足感を大切にする
幸福度って、大きな成功だけで決まるものじゃないといわれています。
温かい飲み物を飲む。好きな音楽をかける。深呼吸を一回する。「今日はこれができた」と一つだけ認める。そういう小さな安心感を見逃さないことが、心の安定につながるといわれています。
以前、「何をしても満たされない感じがする」とおっしゃっていた方と、一緒に「今日一日で、ちょっとよかったな、と思えた瞬間」を探してみたことがあります。最初は「何もない」とおっしゃっていたんですが、少し掘り下げると「帰り道、風が気持ちよかった」「コーヒーがおいしかった」という言葉が出てきました。なかったんじゃなくて、気づいていなかっただけ、ということがよくあります。
⑤ 自分を回復させる行動を知っている
これ、すごく大事なことだと思っています。
誰かと話すと楽になる人もいれば、一人になることで整う人もいる。体を動かすことで回復する人もいれば、静かに過ごすことで落ち着く人もいる。
カウンセリングの中でよくやるのが、「あなたにとっての回復リスト」を一緒に作ることです。「これをすると少し楽になる」というものを、いくつか書き出してもらう。10分の散歩、好きなドラマを一話見る、お風呂にゆっくり入る——どんな小さなことでもいいんです。
しんどい時ほど、何をすればいいかわからなくなりますよね。だからこそ、元気な時に「回復リスト」を作っておくと、いざという時に動きやすくなります。
世間で「良い」とされる方法じゃなくて、自分に合った回復方法を見つけること。それが心の折れにくさにつながります。
セルフコンパッションが心を折れにくくする
ところで、「セルフコンパッション」という言葉、聞いたことありますか?
テキサス大学のクリスティン・ネフ(Kristin Neff)博士が提唱した概念で、「苦しい時や失敗した時に、自分に対して思いやりを向ける姿勢」のことです(※4)。
セルフコンパッションとは何か
大切な友人が「失敗しちゃった」と落ち込んでいたら、どうしますか?
ほとんどの人は、まず話を聞いて、「大丈夫だよ」「次があるよ」って言ってあげるはずです。責める前に、まず受け止める。それが自然な反応ですよね。
でも、自分に対しては? 「なんでこんなこともできないんだ」「また失敗した」「自分はダメだ」——こういう言葉を、心の中で繰り返してしまっていませんか。
これって、よく考えると、大切な人には絶対に言わないことを、自分には毎日言い続けているわけですよね。カウンセリングでこの話をすると、「言われてみれば……確かにそうですね」と気づかれる方が多いんです。
「自分に甘い」とは違う考え方
セルフコンパッションというと、「自分を甘やかすこと」と混同される方がいます。でも、それとは違います。
失敗を「なかったこと」にするわけじゃない。反省はします。ただ、反省と自己攻撃は別物なんです。
反省とは、「次にどうするか」を考えること。自己攻撃とは、「どれだけ自分がダメか」を繰り返し確認すること。前者は前に進む力になりますが、後者はただ消耗するだけです。「次はどうするか」を考えられる状態に戻ること——それが現実的な回復につながるといわれています。
自分を責め続けると回復力は下がりやすい
あるクライアントの方(20代・女性)は、仕事でうまくいかないことが続いた時期、毎晩寝る前に「今日もダメだった」と振り返るのが習慣になっていると話してくれました。
最初は「反省することで次に活かせる」というつもりだったようです。でも実際には、毎晩少しずつ消耗していた。気づいた時には朝がしんどくなっていて、「なんでこんなに疲れてるんだろう」とはじめてカウンセリングに来られました。
その方と一緒に取り組んだのが、夜の振り返りの内容を少し変えること。「ダメだったこと」だけじゃなくて、「今日なんとかできたこと」を一つ加える、という練習です。最初は「そんなものない」とおっしゃっていましたが、続けていくうちに「探せば何かある」と気づけるようになって、少しずつ朝の感覚が変わっていきました。
自己批判がきつい状態では、挑戦することも、休むことも、じわじわ怖くなっていきます。「まだ頑張れる」と思っている時ほど、一度立ち止まって問いかけてみてほしいんです。本当にまだ頑張れる状態なのか、それとも、もう回復が必要な状態なのか、と。
幸福度を高めるために今日からできること
大きなことを始めなくていいです。むしろ「これ以上、自分を追い込みすぎない」ことから始める方が、現実的だと思っています。
「頑張る」より「回復する」を意識する
頑張ることに慣れている人ほど、回復することを後回しにしがちです。でも、回復なく走り続ければ、いつかどこかで止まります。
「今日は何を頑張るか」だけじゃなくて、「今日はどう回復するか」も、予定に入れてみてください。些細なことでいい。「夜はスマホを早めに置く」でも「お気に入りのお茶を飲む時間を作る」でも。
カウンセリングで「回復の時間を予定に入れる」という話をすると、「そんな、わざわざ予定にしなくても」とおっしゃる方がいます。でも逆に言えば、予定にしないと後回しになってしまうから疲れが溜まっているわけで。意識的に「回復の時間」を守ってみると、感覚が変わることがあります。
休息を"サボり"として扱わない
休むことは、何もしていない時間じゃない。心と体を戻すための大切な時間です。
「休んでいい」と自分に許可を出すこと——これ自体が、回復の一部なんです。休んでいる間も心が緊張したままでは、回復できないんですよね。
以前、「休んでも疲れが取れない」とおっしゃっていた方がいました。話を聞いていくと、横になりながらもずっと「明日どうしよう」「これ終わらせなきゃ」と考えていたんです。体は休んでいるけど、頭は全然休んでいない状態でした。体を休める時間と、頭を休める時間は、少し別に意識する必要があるかもしれません。
小さな達成感を積み重ねる
大きな目標ばかり追いかけると、できていないことに目が向きやすくなります。
だから、小さな達成感を意識することが大切です。朝起きられた、メールを一つ返せた、少しだけ片づけられた——そのくらいの話で全然いい。小さな達成感は、心の土台を少しずつ支えてくれるといわれています。
「そんな些細なことを達成感にしていいの?」と思う方もいるかもしれません。でも、しんどい時ほど「小さいこと」が積み重なることの意味は大きいんです。あるクライアントの方は、手帳に毎日「今日できた小さなこと」を一行だけ書く習慣をつけたところ、「なんか、思ってたより自分、できてるんだな、とわかってきた」とおっしゃっていました。
「安心できる時間」を増やしていく
楽しいことを増やそうとする前に、まず安心できる時間を増やす。これ、疲れている人にとって一番現実的な一歩だと思います。
楽しむためにはある程度の心の余裕が必要です。でも、安心するためには、そこまでの余裕がなくてもいい。まず安心できる時間・場所・人を確保することが、回復への入り口になりやすいんです。
安心できる場所、安心できる人、安心できる過ごし方——自分にとっての「安心」が何かを知ることが、心の回復につながります。
心が折れそうな時ほど"頑張り方"を見直していい
「もっと強くならなきゃ」と思う人がいます。でも、本当に必要なのは、さらに自分を追い込むことじゃなくて、頑張り方そのものを見直すことかもしれません。
幸福度が高い人は無理を続けない
無理をしない人ではなく、無理を続けすぎない人——それが幸福度の高い人の特徴のひとつです。
必要な時には頑張る。疲れた時には休む。助けが必要な時には頼る。この切り替えができることが、心を折れにくくします。
カウンセリングの中で、「頑張れなくなった自分がおかしい」とおっしゃる方に出会うことがあります。でも多くの場合、おかしいのではなくて、回復せずに走り続けてきた蓄積が出てきているだけなんです。そう伝えると、少しだけ表情がやわらぐことがあります。
"強さ"とは限界まで耐えることではない
強さって、何があっても平気でいることじゃないんだと思います。
つらい時につらいと気づけること。疲れた時に休めること。一人で抱え込まず、助けを求められること——それも立派な強さのひとつです。
「助けを求めることは弱さだ」と思っている方がいます。でも実際には、助けを求めることができる人の方が、長く安定して動き続けられることが多いといわれています。一人で全部抱えることが強さなのではなく、必要な時に必要なサポートを使えることも、強さの一形態なんだと思います。
自分を守ることも大切なスキルのひとつ
頑張る力は、多くの人がすでに持っています。だからこそ、これから育てたいのは、自分を守る力です。
無理を続けすぎない。自分を責めすぎない。回復する時間を持つ。
幸福度が高い人は、特別に強い人じゃないです。心が折れる前に、少し立ち止まれる人。それだけのことです。
「もっと頑張らなきゃ」と思った時ほど、一度こう問いかけてみてください。
今の自分に必要なのは、努力でしょうか。 それとも、回復でしょうか。
どちらの答えが浮かんでも、それが今の自分への正直なサインです。
参考文献・引用元
書籍
- Lyubomirsky, S.(2008). The How of Happiness: A Scientific Approach to Getting the Life You Want. Penguin Press. (邦訳:ソニア・リュボミアスキー著、渡辺誠監訳『幸せがずっと続く12の行動習慣』日本実業出版社)
- Neff, K.(2011). Self-Compassion: The Proven Power of Being Kind to Yourself. William Morrow. (邦訳:クリスティン・ネフ著、石村郁夫・樫村正美訳『セルフ・コンパッション』金剛出版)
- 岩野卓(2019). 『折れない心をつくる レジリエンスの心理学』朝日新書
Webサイト
- ※1 Lyubomirsky, S., King, L., & Diener, E. (2005). The benefits of frequent positive affect. Psychological Bulletin, 131(6), 803–855. https://doi.org/10.1037/0033-2909.131.6.803
- ※2 厚生労働省「こころの耳」燃え尽き症候群(バーンアウト)関連情報 https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1693/
- ※3 「レジリエンス研究とストレスの客観的計測法」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpa/28/1/28_10/_article/-char/ja/
- ※4 Neff, K. D. (2003). Self-compassion: An alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself. Self and Identity, 2(2), 85–101. https://doi.org/10.1080/15298860309032
参考文献
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