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見えているのに、気づいていない? 心を軽くする“認知バイアス”との付き合い方
執筆者アイコンかよこ2026年4月3日 16:52

見えているのに、気づいていない? 心を軽くする“認知バイアス”との付き合い方

なんでこんなに気にしてしまうんだろう。 どうして、同じ考えにとらわれてしまうんだろう。 そんなふうに感じたとき、私たちはつい「自分の考え方が良くないんだ」と考えてしまいがちです。 けれど実は、その背景には、誰にでも備わっている“心のしくみ”が関係していることがあります。 それが「認知バイアス」と呼ばれるものです。 私たちの脳は、たくさんの情報を効率よく処理するために、無意識のうちに“ものの見方のクセ”をつくります。 そのおかげで日常生活はスムーズになりますが、ときにそのクセが、気づかないうちに不安を強めたり、人間関係を難しく感じさせたりすることもあります。 この記事では、日常の中で起こりやすい3つの認知バイアス 「ネガティビティバイアス」「確証バイアス」「チェンジブラインドネス」を取り上げながら、心を少し軽くするためのヒントをお伝えします。

1.認知バイアスとは何か

認知バイアスとは、誰もがもっている、考え方のクセのことをいいます。

人は、合理的に考えているように見えて、意外と合理的でない判断や行動をとっていることがよくあります。

あなたも、「なぜあんな簡単なことに気づけなかったんだろう?」と後から悔やむ経験はしているのではないでしょうか?

それは、あなただけではなく、多くの人がもっている思考のクセなのです。

 

「認知」とは、ものを見たり聞いたり、そこから何かを感じたり、覚えたり、考えたり、判断したり…そんな「心の働き」全般のことを言います。

「バイアス」は、偏見だとか先入観だとかを意味する言葉です。

なので、「認知バイアス」は、心の働きの偏りや歪みを指す言葉です。

ここで、疑問に思う方もいるかもしれません。

「人はどうして、偏見とか先入観なんてクセをもっているの?

そんなのない方が絶対いいはずなのに」と。

なぜ、人の脳はこんな仕組みを持っているのでしょうか?

 

例えば、原始時代に生きていて、今まで見たことのない動物と遭遇したとします。

その動物が、自分よりも数倍大きくて、口から大きな牙が出ていて、足の爪も長くて鋭かったら、まず逃げますよね。

「いやいや、見た目だけで判断しちゃいけない。

もう少し相手を知るために情報を集めてみよう」

そんなことをしていたら、命の危機になってしまうかもしれません。

少ない情報から大まかに全体的なイメージをとらえることで、今まず必要な関わり方や対処を判断するのは、命を守るための心の大事な働きでもあるのです。

ただ、そうは言っても、大まかでざっくりしたものの見方だけでは失敗したり困ってしまうこともありがちです。

今回は「認知バイアス」を知ることで、困ってしまう思考のクセからちょっとだけ自由になってみましょう。

2.日常にある3つの認知バイアス

①ネガティビティバイアス

― 悪いことのほうが強く残る ―

こんなこと、ありませんか?

  • 全体的には好評なのに、たった一人の厳しい指摘が頭に残ってしまう

  • ずっと欲しかった商品のレビューを見たら、数少ないネガティブなレビューが気になって買うのをためらってしまう

  • 楽しい一日だったのに、一回のミスがずっと気になってしまう

これは、ネガティビティバイアスと呼ばれる認知バイアスです。

人は、ポジティブな出来事や情報よりも、ネガティブな出来事や情報のほうに注意を向けやすく、また、それが記憶にも残るという現象のことです。

自然界で人が生き延びるには、よかったことを覚えるよりも、危険や怖かったことを覚えておく方が今後の危険を回避するのに役に立つ、と脳が判断しているのではないか、と考えられています。

とはいえ、現代社会を生きるのに、この働きが必要か?と考えると、少し疑問が残ります。

上の例のように、ネガティブなことばかりが頭に残っているとそれ自体もしんどいし、

「気にしすぎ」「こんなことでクヨクヨばかりして」とさらに自分を責めてしまうことがあるかもしれません。

それならいっそ、

あなたの脳が、あなたを守ろうとして起こしてしまう自然な現象

と覚えておくことで、思考のクセから距離をとってみるのも一つの方法かもしれません。

 

②確証バイアス

― 思い込みを裏付ける情報だけ集めてしまう ―

確証バイアスも、普段の生活の中で多く見られるものです。

こんなことありませんか?

  • 「嫌われているかも」と感じると、それを裏付ける言動ばかり目に入る

  • 楽しそうにしている子ばかり目に入って、自分と比べてしまう

「確証バイアス」は、自分の思い込みを裏付ける情報ばかりを集めて、より思い込みを強めてしまうというクセをいいます。

一度、「嫌われたかも?」と思い込むと、

「そういえば、あの時、Aちゃんに挨拶したけどスルーされた」

「ほらやっぱり私は嫌われてるんだ」と、どんどん思い込んでしまう。

けれど、実はAちゃんはその日、考え事でぼんやりしていて、あいさつに気づかなかったのかもしれません。

あなたの挨拶に返事がなかったことは”現実”としても、

「だから私のこと嫌いなんだ」は、そこから推測した”解釈”でしかありません。

「私のこと嫌いなんだ」という思い込みに無自覚なままでいると、

あなたのAちゃんに対する態度がぎこちなくなる、

それによってAちゃんのあなたへの態度が実際にぎこちなくなる、

それを見たあなたが「ほら、やっぱり嫌われ決定だ」と思い込み、結局、関係がぎくしゃくしてしまう、

-残念ながら、こんなふうに思い込みが現実化してしまうこともあります。

 

この悪循環から抜け出すには、”現実”と”解釈”とを区別することが大切です

「もしかして…いや、きっとそうだ、そうに違いない!」

こんな思考サイクルに気づいたときは、一度立ち止まって、

「ん? これは現実かな? 解釈(思い込み)かな?」

と考える習慣をつけていけるといいですね

③チェンジブラインドネス

― あるのに見えていない、変化しているのに気づかない ―

こんなこと、ありませんか?

  • 考えごとをしていて、目の前に友だちがいたのに気づかなかった

  • 子どものことは毎日見ているはずなのに、久しぶりに会った親戚に「大きくなったね」と言われて、背が伸びたことに気づいた

  • 毎朝、鏡を見ているはずなのに、「最近、顔色がよくないね」と家族に言われて初めて自分の不調に気がついた

チェンジブラインドネスは、

注意を向けていないものは見ているはずなのに見えていない、

ゆっくりとした変化には気づかない

という認知バイアスです。

テレビのクイズ番組などでも、

「絵の中で、ゆっくりと変わっていく部分があるよ どこか見つけてね」

といったものがありますよね?

変わる前と後が並んでいれば、気づかない人がいないくらい明らかなのに、ゆっくりと変化すると気づけない。

人の認知は不思議ですよね。

 

このチェンジブラインドネスが教えてくれるのは、

私たちの注意の容量は限られている、

ということです。

あることに集中してしまうと、別のことに注意を向けることができなくなり、注意を向けていないところで相当な変化があってもそれに気づけない、ということが日常的に起こっているのです。

他の認知バイアスと組み合わさると、

  1. Aちゃんは自分の心配事に注意が向かっていて、目の前にあなたが現れたことに気づかない(チェンジブラインドネス)

  2. あなたは、普段はAちゃんと楽しく過ごしているはずなのに、Aちゃんが挨拶に返事をしなかったことに気持ちが向きすぎてしまう(ネガティビティバイアス)

  3. 挨拶がスルーされたことで、「嫌われた」と思い込んでしまう(確証バイアス)

  4. あなたは自分の「嫌われたかも」に注意が向いていて、目の前のAちゃんが何か心配を抱えていることに気づかない(チェンジブラインドネス)

ということも起こり得ます。

このとき、「気づかなかった」自分を責める必要は全くありません。

むしろ、認知バイアスがそうさせていることに気づけるだけで、きっと修正ができるようになります。

この次に、その修正方法を考えていきましょう。

3.認知バイアスに気づくための3つの視点

視点①「今、どこに注目している?」

 ネガティビティバイアスに気づけたとしたら、それは大きな第一歩です。

 

あなたは、普段はAちゃんと楽しく過ごしているはずなのに、Aちゃんが挨拶に返事をしなかったことに気持ちが向きすぎてしまう(ネガティビティバイアス)

 

この例なら、何ができるといいでしょうか。

まずは、「Aちゃんがたまたま挨拶に返事をしなかっただけのところに注目しすぎてるかも」

と気づくことです。

そして、それに気づいたら

「普段はAちゃんと楽しく過ごしている」

ことに注目を向けなおすと、ネガティビティバイアスから解放されるかもしれません。

 

**視点②「これは事実?それとも解釈?」

**

次に、この例はどうでしょうか?

 

「挨拶がスルーされたことで、「嫌われた」と思い込んでしまう(確証バイアス)」

 

「嫌われた」と思い込んだ瞬間から、たった1回の挨拶スルー以外の「嫌われた証拠」を集めてしまっていそうですね。

それなら、あえてそれを反証する証拠(嫌われたのではない証拠)も思い浮かべてみましょう。

もし、自分のことと思うと「嫌われたのではない」と思い切れなかったら、「嫌われたんじゃないかと心配している友だち」を想定して、その子の弁護士になった気持ちで「そうではないかもしれないよ」という証拠を集めてみるのもいいですよ。

確証バイアスは、意外と反証に弱い面があります。

ネガティビティバイアスの気づきも使って反証してみると、確証バイアスが弱まって、

「あれ? ”嫌われたかも”は間違いだったかも?」

と気づけるかもしれません。

視点③:「見落としているものはない?」

ここまでくると、かなりバイアスから解放されて別の可能性が見えてきているかもしれません。

せっかくなので、次の一歩に進んでみましょう。

 

あなたは自分の「嫌われたかも」に注意が向いていて、目の前のAちゃんが何か心配を抱えていることに気づかない(チェンジブラインドネス)

「”嫌われたかも”は間違いかも?」と気づいたあなたは、

「それなら、どうしてAちゃんは挨拶をスルーしたんだろう?

いつもならそんなことはないのに

Aちゃん、何かあったのかな?」

そこまで気づけると、チェンジブラインドネスで見えなかったことに気づけるかもしれません。

ここからまた何かの思い込みの罠にはまってしまう前に、

「Aちゃん、今日何かあった?」

と、Aちゃんに尋ねてみてもいいかもしれません。

直接尋ねることで、Aちゃん自身が自分のチェンジブラインドネスで、あなたの存在や自分の様子の変化など気づけなかったことに気づけるかもしれません。

それに、自分が気づかなかったことに気づいてくれたあなたへの信頼が深まり、Aちゃん自身の心配のスパイラル(渦)から抜け出すきっかけになるかもしれません。

 

これらはあくまで例ですが、よく起こるすれ違いでもあります。

今回の気づきが、大切な人とのすれ違いの予防につながると嬉しいです。

◆簡単ワーク

①B5からA4くらいの用紙を一枚用意してください(もっと小さなメモ程度でもOK)

②最近の出来事を1つ取り上げて、以下の項目を書き出してみましょう(箇条書きでOK)

  • 実際の出来事

  • それに対する自分の解釈(思い込み)

  • 他の見方、可能性

③最後に、気づいたことと、気持ちの変化を書き出してみましょう

4.それでも思い込みから自由になれないとき

認知バイアスに気づいて、ここから自由になるために別の視点を試してみて、

それでもやっぱり思い込みが頭から離れてくれないこともありますよね。

特に、例に挙げた「嫌われたかも」といった思い込みは、それを外すことに不安や警戒を感じてしまう人も少なくないかもしれません。

もしそうでも、そのことで自分を責める必要はありません。

認知バイアスは、人の脳の仕組みとして備わっていて、誰もが陥るものなのです。色々な工夫はしても、実際になくなるわけではありません。

また、疲れている時ほど、脳は情報を大まかに処理しようとして認知バイアスが起こりやすくなる、という面もあるようです。そこに抵抗しようとしても、疲れてしまいます。

だから、

「認知バイアスが働きやすくなっているな」「またこのパターンにはまってしまったな」

と、気づくだけでまずはOKです。

そこから、

「今、疲れているんだな」

と、自分に休養や癒しを与えてあげられるといいですね。

5.まとめ

今回、ご紹介した「認知バイアス」は、誰にでもある心の働きです。

人の脳はとても高性能にできています。ただ、それでも歪みや偏り、判断のミスは起こるものです。

それはとても自然なことで、あなただけのことでもなければ、あなたが悪いわけでもありません。

今回、「認知バイアス」を知ったことで、あなたは今後、その歪みやミスに振り回されにくくなるかもしれません。けれど、知ったからと言って、完璧にコントロールすることは難しいし、その必要はないことも、最後にお伝えします。

人は、ミスをするものです。ミスはあってもいいのです。

こうしてミスしやすい心の仕組みがあると知ってもらうことで、この長文を最後まで読んでくださったあなたの心が少しずつ軽くなっていけば、とても嬉しいです。

参考文献

・鈴木宏昭著『認知バイアス 心に潜むふしぎな働き』講談社,2020 URLは登録されていません
・ニュートン別冊『心理の取扱説明書 心の特性がよくわかる!人生に役立つ心理学の授業』ニュートンプレス,2022 URLは登録されていません
・錯視コレクション100 ネガティビティバイアス 悪いところが気になる
https://www.jumonji-u.ac.jp/sscs/ikeda/cognitive_bias/cate_m/m_11.html

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